はじめに
経営者にとって、ビジョン と戦略 を正しく理解し使い分けることは、企業の方向性を定める上で極めて重要です。ビジョンとは企業が将来的に「どうありたいか」を示すもので、組織全体の羅針盤となります。一方で戦略は、そのビジョンを実現するための具体的な道筋です。しかし、ビジョンと戦略を混同してしまったり、明確に区別できていなかったりするケースも少なくありません。ビジョンなき戦略は行き先不明の航海のようなものであり、戦略なきビジョンは机上の空論になりかねません。本記事では、ビジョン(大義)と戦略(実行)の違いを整理し、どのように企業の方向性を決定すべきかを解説します。さらに、ビジョンと戦略を適切に設計して経営に落とし込む方法やフレームワーク、国内企業の事例も紹介します。経営者・事業責任者の方々が、自社の持続的成長のためにビジョンと戦略を活用できるよう具体的なヒントを提供します。
目次
ビジョンとは何か?
ビジョン とは、企業が最終的に目指す将来像や存在意義(大義)を示すものです。簡潔に言えば、「会社のありたい姿」を描いた長期的なゴールです。例えば「世界中の人々を繋ぎ幸せにする企業になる」や「〇年までに業界トップシェアを獲得する」といった形で表現されます。ビジョンは売上や利益といった直接的な数値目標ではなく、企業が社会にどのような価値を提供し何を成し遂げたいかという存在意義 を反映したものです。そのため、ビジョンを定めることで経営者自身だけでなく従業員一人ひとりが進むべき方向を認識でき、判断に一貫性が生まれます。ビジョンは理想的で大きな夢を描きますが、単なる「夢」や漠然とした願望ではなく、現実的な戦略によって達成可能な未来像 であることが重要です。一般的に5年後、10年後といった中長期スパンで実現を目指す具体的な姿を設定します。
ビジョンを策定する際には、自社のパーパス(存在意義)や経営理念を起点に考えると効果的です。パーパスとは「何のためにその企業が存在するのか」という社会的使命であり、ビジョンの土台となる考え方です。ビジョンはパーパスや経営理念にもとづいており、企業の「ありたい姿」を社内外に示す約束といえます。明確なビジョンがあれば、従業員にとっては自社で働く意義がはっきりし、仕事に対するモチベーション向上につながります。ビジョンは経営者にとって会社の長期目標であり、従業員にとっては日々の業務の指針となるものなのです。
戦略とは何か?
戦略 とは、定めたビジョンや目標を実現するための具体的な方法やシナリオを指します。平たく言えば、「ビジョンを達成するにはどう戦うか」を示す実行計画 です。企業経営における戦略は、事業環境の分析にもとづいて、自社がどの市場でどのように競争優位を築きゴールへ到達するかという道筋を描くものです。戦略には短期から中期(数年単位)の視点での計画が含まれ、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・時間)の配分方法や事業ポートフォリオの選択など、具体的な意思決定が伴います。
戦略を立案する際のポイントは選択と集中 です。企業が利用できる資源は限られているため、何に注力し何を捨てるかを明確にしなければなりません。「どの市場で戦うか」「自社の強みをどう活かすか」「競合に勝つために何を提供するか」といった問いに答える形で戦略を策定します。例えば、新規顧客を開拓したい場合でも「単に営業を強化する」というだけでは戦略とは言えません。市場環境や顧客ニーズ、競合の状況を分析した上で、「特定の市場セグメントに絞り込んで集中的にアプローチする」「自社の強みである低コスト生産を武器に価格優位性で競争する」など、明確な方針と手段の組み合わせを設計することが戦略です。
また、戦略と戦術の違い も押さえておきましょう。戦略はビジョン実現のための大局的な計画であり、「何を成し遂げるか」という方向性を示します。一方、戦術は戦略を現場で実行するための具体的な施策や手段です。例えば、「ブランド知名度を向上させる」という戦略に対し、具体的な広告キャンペーンやSNS発信の計画は戦術にあたります。戦略が全体のシナリオなら、戦術はそのシナリオの各章で取るアクションと言えるでしょう。経営者は戦略レベルで舵取りを行い、現場は戦術レベルで動くことで、組織全体としてビジョンに向けた前進が可能になります。
ビジョンと戦略の関係性
ビジョンと戦略は車の両輪 のような関係であり、互いに補完し合っています。ビジョンが企業の目的地 だとすれば、戦略はその目的地へ向かうロードマップ です。どちらか一方が欠けても効果的な経営はできません。ビジョンが明確でなければ、戦略を立てようにも何をゴールに計画すべきか定まらず、社員は何のために行動するのか分からなくなってしまいます。実際、ビジョンのない戦略では、短期的な課題対応や場当たり的な施策に終始しやすく、全体最適を欠いた迷走状態に陥るリスクがあります。成果を測る基準も曖昧になるため、組織のモチベーションも上がらず持続的な成長は望めないでしょう。
逆に、戦略の裏付けがないビジョンは絵に描いた餅にすぎません。どんなに高尚で魅力的なビジョンを掲げても、それを実現する現実的な計画が無ければ社内外の支持を得ることは困難です。「行動のないビジョンは幻想に過ぎず、ビジョンのない行動は悪夢に過ぎない」という言葉が示す通り、ビジョンと行動(戦略)はセットで初めて意味を持ちます。
では実務において、ビジョンと戦略は具体的にどう結び付くのでしょうか。基本的な考え方として、まずビジョンを起点に逆算 して戦略を構築します。たとえば「5年後に業界トップシェアを取る」というビジョンがあるなら、「そのために3年後にはどのポジションにいるべきか」「1年後には何を達成すべきか」といった具合にマイルストンを設定し、段階的な計画を立てます。こうすることで、長期ビジョンを短期・中期の戦略目標へとブレイクダウンでき、日々の具体的なアクションに落とし込めます。また、ビジョンは基本的に不変の旗印ですが、環境変化に応じて戦略は柔軟に見直すことも重要です。市場や技術の変化で戦略の軌道修正が必要になっても、ビジョンがしっかり定まっていればブレない軸があるため、変化に対応しつつも企業の根本的な方向性は維持できます。経営者はビジョンという不動の北極星 を示しつつ、その星に向かう航路である戦略は状況に応じて舵を切る、このバランス感覚が求められます。
ビジョンと戦略を適切に設計する方法(フレームワーク活用)
ビジョンと戦略を効果的に策定・実行するには、いくつかの経営フレームワークを活用するとよいでしょう。ここでは、経営者・事業責任者に役立つ代表的なフレームワークを4つ紹介します。それぞれのフレームワークは、ビジョンと戦略を整理し、組織全体に浸透させるのに有効な手法です。
1. ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の整理
まず基本となるのがMVV(Mission・Vision・Value) のフレームワークです。これは企業の存在意義や方向性を言語化し、経営の核となる考え方を整理するためのものです。各要素の意味は以下の通りです。
ミッション(使命) :企業の存在目的や果たすべき役割を表します。なぜその会社が存在し、社会や顧客に何を提供するのかという根本的な使命 です。ミッションは現在進行形の企業の責務や事業ドメインを示すもので、経営者や従業員の行動指針にもなります。例えば「○○を通じて世界をより良くする」「△△分野で革新的なサービスを提供する」など、企業の根源的な目的を簡潔に表現します。
ビジョン(将来像) :先述した通り、ミッションに基づいて企業が将来的に到達したい具体的な姿です。○年後にどうなっていたいか を描いた目標像であり、ミッションが存在理由の「今」を示すなら、ビジョンは目指すべき「未来」を示します。ビジョンはミッションと連動しており、ミッションを達成した先にある理想の状態といえます。
バリュー(価値観) :ミッションを遂行しビジョンを実現する過程で、組織や従業員が大切にする価値観・行動指針です。企業文化の土台となるもので、「どのような姿勢で仕事に取り組むか」「判断基準となる信条は何か」を定めます。例えば「顧客第一」「チャレンジ精神」「チームワークを尊ぶ」といったバリューを設定し、日常の意思決定や行動の拠り所とします。
MVVを明確に定義し社内で共有することで、組織の意思決定は一貫性と迅速さを増します。経営層から現場まで全員が共通の理念を理解すれば、社員は自分の業務を会社のミッション・ビジョンに結びつけて考えられるようになります。結果として、モチベーションの向上や判断の迷いの減少といった効果が期待できます。また、ミッション・ビジョン・バリューに沿った商品開発やサービス提供は、企業の大義に基づく説得力を持ち、ステークホルダーからの共感も得やすくなるでしょう。まずはMVVの策定によって企業の軸 を言語化し、それを全社に浸透させることがビジョンと戦略設計の第一歩となります。
2. OKR(Objectives and Key Results)の活用
ビジョンを具体的な行動計画に落とし込むには、目標管理のフレームワークであるOKR(Objectives and Key Results) が有効です。OKRはシリコンバレー企業(IntelやGoogleなど)で採用され広まった手法で、組織全体の目標と成果指標を明確にするものです。基本的な構成は、Objective(目標)とそれを測るKey Results(主要な成果指標)のセットです。
Objective(目標) :達成を目指す大きな目標を定性的に表したものです。企業のビジョンや戦略に合致し、社員にとってインスピレーションを与える明確で野心的な目標を設定します。Objectiveは「○○を実現する」「△△な状態を達成する」といったように方向性を示し、組織が進むべき先を指し示します。トップダウンで設定される会社全体のObjectiveは、まさにビジョンに沿ったテーマであるべきです。
Key Results(主要な成果指標) :Objectiveを達成するために必要な具体的・定量的な指標です。「どの程度できたら目標を達成と言えるか」を測るものさしで、通常3〜5つ程度のKRsを設定します。各KRには数値目標や期限が含まれ、進捗を客観的に評価できるようにします。例えばObjectiveが「顧客満足度No.1のサービスになる」であれば、KRとして「NPS(ネットプロモータースコア)を××まで向上させる」や「リピーター率を〇%にする」などを設定します。
OKRの運用では、四半期ごとなど短いサイクルでObjectiveとKRの達成度を振り返り、必要に応じて目標を見直します。この定期レビューとアップデート により、急速に変化するビジネス環境下でも常にビジョン・戦略に沿ったアクションを維持できます。OKRを導入すると、会社の最上位目標から各部門・各チーム・各個人の目標までが垂直に連動し、組織全体が一丸となって優先事項に取り組めます。社員にとっては自分の目標が会社全体のビジョン達成にどう貢献するかが見えるため、目的意識と方向性を持って業務に集中できるという利点があります。ただし、OKR設定時にはビジョンや戦略との整合性を常に確認することが大切です。経営トップが繰り返しビジョンと戦略を発信・共有し、OKR策定の土台に据えることで、OKRはビジョン実現の強力な推進力となるでしょう。
3. バランススコアカード(BSC)の活用
バランススコアカード(BSC) は、ビジョンと戦略を具体的な業績指標と行動計画に落とし込み、経営を「見える化」するためのフレームワークです。BSCでは企業の目標を4つの視点(財務、顧客、内部プロセス、学習と成長)からバランスよく設定し、業績を評価・管理します。もともとは業績評価手法として考案されましたが、現在では「ビジョンや戦略を具体的な行動にまで翻訳する」経営管理手法として広く活用されています。
財務の視点 :売上高や利益率、投資収益率(ROI)など、株主や経営陣が重視する財務目標を設定します。ビジョン・戦略を遂行した結果、どのような財務的成果を出すかを示します。例えば「◯年後までに営業利益を△△億円にする」といった指標です。
顧客の視点 :市場や顧客に対してどのような価値を提供し、どの程度満足してもらうかの目標を設定します。顧客満足度、マーケットシェア、ブランド認知度、リピート率などが指標となります。戦略上狙う顧客層で成功を収めるために必要な成果を示します。
内部プロセスの視点 :優れた顧客価値を提供し財務目標を達成するために、社内のどのプロセスを重視・改善すべきか目標を立てます。製品開発スピード、サービス提供プロセスの効率、品質管理の水準など、内部業務に関するKPIを設定します。
学習と成長(人材)の視点 :継続的な成長を可能にする組織能力や人材育成に関する目標を設定します。従業員満足度、従業員スキル研修受講率、技術革新への投資など、将来のビジョン実現に向けた土台作りを測る指標です。
このようにBSCでは、財務だけでなく非財務の視点を含めた4側面から戦略目標を定め、その達成度をモニタリングします。各視点の目標はビジョン・戦略から一貫性を持って導き出され、戦略マップ という因果関係を示す図で整理されることもあります。BSCを導入することで、ビジョンや戦略と日々の業務活動を直結させることができ、社員一人ひとりが「何をすればビジョンに近づけるか」を理解しやすくなります。また、BSCは戦略実行の進捗管理ツールとしても優れており、定期的な指標のモニタリングにより戦略の有効性を検証・改善するサイクル(PDCA)を回すことが可能です。経営者にとっては、ビジョン・戦略を社内に浸透させるコミュニケーションツールとなり、組織全体の戦略的なまとまり を維持する助けとなるでしょう。
4. 競争優位戦略(ポーターの3つの基本戦略)
戦略を策定する際には、自社がどのような切り口で競争優位を確立するかを明確にする必要があります。経営戦略の基本理論として有名なMBA教授マイケル・ポーターが提唱した「3つの基本戦略」は、その指針となるフレームワークです。ポーターによれば、企業が競争で優位に立つ戦略パターンは大きく以下の3つに分類できます。
コストリーダーシップ戦略 :業界内で最も低いコスト構造を実現し、低価格で製品やサービスを提供することで競争優位を得る戦略です。徹底した効率化や規模の経済を追求し、価格競争で他社をリードします。この戦略が有効なのは、大量生産によるコスト低減が可能で、価格に敏感な幅広い顧客層を対象とする場合です。ビジョンに「世界中の人々に手の届く価格で○○を提供する」といった大衆化志向がある企業は、コストリーダーシップ戦略を取る傾向があります。
差別化戦略 :自社ならではの独自の価値を製品・サービスに持たせ、競合他社との差別化を図る戦略です。高い品質、優れた機能、独特のブランドイメージ、卓越した顧客サービスなどによって「選ばれる理由」を作り出し、価格以上の価値提供を目指します。この戦略では顧客がその差別化要因に魅力を感じていれば、価格競争に巻き込まれにくく高い利益率を維持できます。ビジョンが「業界にイノベーションを起こす」「最高品質で信頼されるブランドになる」などの場合、それを実現する戦略として差別化が選ばれるでしょう。
集中戦略 :特定の市場セグメントやニッチな顧客層に経営資源を集中し、その分野での競争優位を狙う戦略です。上記2つの戦略を特定の対象に絞って実行 するイメージで、「コスト集中」または「差別化集中」とも呼ばれます。大手が手掛けない隙間市場において、徹底した低コストで攻めるか、または特化した差別化価値で熱烈な支持を得るかのいずれかで強みを発揮します。自社の規模や資源が限られる場合でも、集中戦略によって狭い領域でNo.1になることを目指せます。ビジョンに「◯◯領域で世界一になる」といった明確なフォーカスがある企業はこちらを採用しやすいでしょう。
自社のビジョンや市場環境に応じて、上記のどの戦略を主軸にするかを選択することが大切です。複数を同時に追求しようとすると中途半端になり「どっちつかずの戦略」になりかねません(例えば、高品質を謳いながらコスト削減で品質低下を招けば信頼を失うなど)。したがって、経営者は自社の強み・弱みや競合状況を見極め、自社に最適な基本戦略を定める必要があります。この競争戦略の明確化 によって、戦略に一貫性が生まれ、組織全体が共通の勝ち筋に沿って動けるようになります。ビジョンを実現するためには、どの土俵で戦い、いかなる価値提供で勝つのか――そのストーリーを社内外にはっきり示すことが経営の舵取りに不可欠です。
国内企業の事例
最後に、実際の国内企業におけるビジョンと戦略の関係性の事例を2社紹介します。それぞれ、ビジョンを掲げ、それに沿った戦略を策定・実行している例であり、具体像をイメージする参考になるでしょう。
事例①:KDDI株式会社 – ビジョンと中期戦略の連動
大手通信企業のKDDIでは、長期の経営ビジョン と中期の経営戦略 を明確に区別しつつも、一貫した方向性で運用しています。2022年に発表した長期ビジョン「KDDI VISION 2030」では、「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる」と掲げました。これは通信によって人々やモノを繋ぐ同社の使命を発展させ、誰もが夢や目標を叶えられる未来社会を実現するという壮大なビジョンです。このビジョンのもとで、KDDIは「中期経営戦略」を策定しています。ビジョンと戦略をあえて分けて掲げていますが、中期経営戦略はビジョンを達成するために定められており、例えば5GやIoTへの投資強化、新規事業創出、グローバル展開など具体的な柱が設けられています。ビジョンが指し示す2030年の理想像に向け、3年程度のスパンで達成すべき数値目標や戦略課題(顧客基盤の拡大や新サービス開発など)を設定し、順次実行しているのです。
このように長期ビジョンから逆算した戦略計画 を立てることで、KDDIは日々の事業活動と将来像を結びつけています。経営トップはビジョンを社内外に強く打ち出しつつ、その実現に必要な戦略を段階的に示すことで、社員や投資家に対して「今何をすべきか」「どこに向かっているのか」を明確にしています。結果として、社員一人ひとりが自分の業務をKDDI VISION 2030に関連づけて考えやすくなり、全社でビジョン達成への意識を共有しています。KDDIの事例は、ビジョンと戦略を時間軸で層別化し統合的に運用することで、企業の方向性をブレずに推進できている好例と言えるでしょう。
事例②:サイバーエージェント – 野心的ビジョンによる事業拡大
インターネット広告やメディア事業で成長してきた株式会社サイバーエージェントは、創業当初から明確で野心的なビジョンを掲げ、それを原動力に戦略を展開してきました。同社のビジョンは「21世紀を代表する会社を創る」というものです。21世紀を代表するとは非常にスケールの大きな表現ですが、このビジョンがあったからこそ、サイバーエージェントは常に環境変化に柔軟に対応し、新たな事業領域への挑戦を続けてきました。具体的には、インターネット広告代理店事業で成功を収めた後も留まることなく、ブログサービス「Ameba」やソーシャルゲーム、動画配信、近年ではAI事業など、次々と新規事業に投資・進出しています。これは「常に新しい産業を創り出し続けることで21世紀を代表する企業になる」というビジョンドリブンな戦略と言えます。ビジョンの実現に必要とあらば既存事業のやり方や組織体制も大胆に変革し、成長事業には集中的にリソースを投入してきました。
その結果、サイバーエージェントはインターネット広告という創業事業の枠を超えて多角化に成功し、時価総額や業界における存在感で「21世紀を代表する」企業の一角となりつつあります。経営トップである藤田社長がこのビジョンを社内外に発信し続けることで、社員も高い当事者意識を持って大胆な挑戦を続けています。サイバーエージェントの事例から学べるのは、大胆なビジョンが社員の意識と行動を変革し、戦略的なチャレンジを後押しする という点です。明確なビジョンがあればこそ、環境の変化を恐れず新規事業への投資というリスクある戦略も組織で共有された覚悟のもと実行できるのです。ビジョンと戦略が見事に連動し、企業成長のエンジンとなった好例と言えるでしょう。
まとめ:経営者が意識すべきポイント
ビジョンと戦略の違いと関係性、さらに具体的な設計手法や事例について解説してきました。最後に、経営者・事業責任者が実務で意識すべきポイントを整理します。
ビジョンと戦略の明確な区別と連動 :ビジョン(大義)は企業の羅針盤、戦略(実行計画)は航路図です。まずは自社の存在意義を踏まえたビジョンを明確に打ち立て、それを起点に逆算して戦略を策定しましょう。ビジョンと戦略はワンセットで初めて効果を発揮することを常に念頭に置き、方針に一貫性を持たせます。
フレームワークの積極活用 :MVVで経営理念を言語化し、OKRでビジョンを具体的な目標に落とし込み、BSCで多面的な指標管理を行い、競争優位戦略で勝ち筋を明確にする――これらフレームワークはビジョンと戦略を設計・実行する上で強力な支援ツールとなります。ただ形だけ導入するのではなく、自社の状況に合わせてカスタマイズし、社員と共通言語化することが大切です。
全社への浸透とコミュニケーション :どんなに優れたビジョンや戦略も、経営陣だけのものでは意味がありません。社内の隅々まで共有し、日々の意思決定や行動の拠り所になるよう浸透させましょう。経営トップ自ら繰り返しビジョンを語り、戦略の進捗や成果を発信し続けることで、従業員の意識と行動を方向付けることができます。ビジョン・戦略に関するメッセージが一貫して発せられる組織ほど、社員は自律的に判断・行動しやすくなります。
定期的な見直しと環境適応 :ビジョンは長期的な指針ですが、時代の変化や新たな機会に応じて微調整が必要な場合もあります。また戦略は環境変化に対応して柔軟にアップデートすべきものです。定期的に経営陣でビジョン・戦略をレビューし、外部環境や社内の学びを踏まえて必要なら軌道修正しましょう。ただし、その際もビジョンと戦略の整合性を崩さないことが重要です。常にビジョンを出発点として戦略を考える習慣を持てば、変化に対応しつつも企業の軸足はブラさずに済みます。
経営者にとって、ビジョンを描く力と戦略を練る力は両輪です。遠くを見据える洞察と、足元を固める計画力のバランスが取れたとき、組織は強い推進力を得ます。社員が「この会社は何のために存在し、どこに向かっているのか」を理解し、自分の役割をそこに重ね合わせて働けるようになることが理想です。明確なビジョンと緻密な戦略を携え、それらを全社で共有して実行に移すことで、企業はぶれない軸を持ちながらも環境変化に対応できるしなやかな強さ を手に入れるでしょう。経営者はビジョンと戦略という二つの舵を上手に使いこなし、持続的な成長への航路を切り開いていきましょう。
参考記事
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