目次
企画の重要性
新規ビジネスの世界では「アイデアは事業の起点にすぎない」と言われます。斬新な発想があっても、それだけで成功が約束されるわけではありません。重要なのは、そのアイデアをどう実現し事業化するか という視点です。実際、良いアイデアには新規性だけでなく「解決すべき課題」と「収益を生む仕組み」まで含めて考えることが求められます。つまり、ただ面白い企画を思いつくだけでは不十分で、顧客のニーズとビジネスモデル を見据えて磨き込む必要があるのです。
企画を事業として形にするには、多方面の検討と準備が欠かせません。
例えば、必要な人材や資金を確保し、市場ニーズを検証しながら段階的に実行するプロセスが求められます。アイデア段階では魅力的に見えたものも、事業化の過程で顧客の反応 や収益性 を確認しなければ、現実に「売れる商品・サービス」にはなりません。優れた企画とは、発想の新しさに事業化の視点を加え、初めて価値を持つのです。
アイデア発想のフレームワーク
新たな企画を生み出すには、創造力だけでなく体系的な発想法が役立ちます。以下では代表的なフレームワークとして SCAMPER法 , ジョブ理論 , ブルーオーシャン戦略 の3つを紹介します。これらを活用することで、思考の幅を広げ「売れる企画」の種を見つけやすくなります。
SCAMPER法(スキャンパー法)
SCAMPER法は既存のアイデアをヒントに新しい発想を得るためのフレームワークです。
Substitute(代用) , Combine(結合) , Adapt(応用) , Modify(変更) , Put to other uses(転用) , Eliminate(削減) , Reverse(逆転) の7つの視点から発想を促します。具体的には「別の材料に置き換えたら?」「全く異なる要素を組み合わせたら?」と自問し、アイデアを広げていきます。例えば、日本の外食産業で有名な例として、モスバーガーはハンバーガーのバンズを米飯に置き換えたライスバーガーを生み出しました。
これは代用(Substitute)の発想で既存商品に新価値を加えたケースです。SCAMPER法を使うことで、既存の延長線上に留まらない多彩な企画アイデアを短時間で量産できるはずです。
ジョブ理論(Jobs to Be Done)
ジョブ理論は「顧客が本当に“片づけたい用事(ジョブ)”は何か?」に焦点を当てる発想法です。ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授が提唱した理論で、顧客が商品・サービスをどんな目的で“雇用”しているか を探ります。
ポイントは、顧客属性ではなく状況と目的に注目すること。例えばある飲料が「朝の通勤中に腹持ちを良くする」というジョブを果たしていると分かれば、その本質的な価値に沿った企画を考案できます。ジョブ理論を活用すれば、自社の商品が顧客の真の目的にどう応えうるか を発見できるため、表面的なアイデアではなく需要の根本に刺さる企画づくりに役立ちます。
日々の顧客行動を「どんな進歩を遂げようとしているのか」という視点で観察し直すことで、新たな商品コンセプトが見えてくるかと思います。
ブルーオーシャン戦略
ブルーオーシャン戦略は、競合ひしめく既存市場(レッドオーシャン)ではなく、競争のない未開拓市場(ブルーオーシャン)を切り開く 発想法です。既存市場で差別化を図るのではなく、まだ誰も提供していない独自の価値を創造することで競争を回避します。具体的には、自社の提供価値を見直し「業界の常識を打ち破るには何を省き何を加えるか」を検討します。この戦略を取ることで、価格競争に巻き込まれず高い利益率を維持できる可能性があります。
例えば任天堂が「Wii」や「Switch」で、それまでゲームをしなかった層を取り込む娯楽体験を提供したのはブルーオーシャン戦略の代表例です。
ブルーオーシャン戦略の鍵は、競合ではなく顧客に提供できる新しい価値にフォーカスする こと。これにより、競争優位ではなく競争不要の市場を生み出す発想転換が可能になります。
事業化のプロセス
良いアイデアが生まれたら、次はそれを実際に“売れる企画”に育てるプロセスが重要です。ここでは、アイデアを事業化するまでの大まかな流れを3つのステップに分けて解説します。各ステップで検証と修正を重ねることで、企画の成功確率を高めることができます。
STEP
1. アイデアをコンセプトに落とし込む
まず、発想したアイデアを具体的なコンセプト に磨き上げます。ただ漠然と「○○なサービスを作りたい」という段階から一歩進めて、「誰に・何の課題を・どのように解決するか」を明文化します。社内外の人に説明できるコンセプトにすることで、不明確な点や仮説が浮き彫りになるでしょう。可能であれば簡易なプロトタイプやモデルを作り、企画の骨子を固めます。ここでは顧客目線 でアイデアを点検することが大切です。「本当にその商品・サービスにお金を払いたいと思うだろうか?」という問いを自問し、価値提案を洗練させます。アイデア段階では魅力的に思えたものも、事業コンセプトとして練り上げる際に不要な要素を削ぎ落とし、核となる価値を際立たせましょう。
STEP
2. マーケットフィットを検証する
次に、考案したコンセプトが市場で受け入れられるかを検証します。いきなり大規模展開するのではなく、小さな実験(MVP: 実用最小限の製品)を通じて顧客の反応を確かめます。
具体的には、限られた機能や小規模な提供地域でサービスを試し、ユーザーからフィードバックを集めます。ここで注目すべきは顧客が感じる価値と利用継続意向です。ポジティブな反応が得られれば、その企画はプロダクトマーケットフィット(PMF)に近づいていると言えます。
一方、反応が芳しくない場合はコンセプトに立ち返り、機能やターゲット層の仮説を修正します。重要なのは、この段階で失敗しても素早く学びに変える姿勢です。市場検証を通じて、企画が顧客の真のニーズに適合しているかを見極め、必要に応じてピボット(方向転換)も検討します。小さな検証を積み重ねることで、企画は現実の市場に耐えうる形へとブラッシュアップされていくのです。
STEP
3. 収益化の仕組みを構築する
最後に、企画を継続的なビジネスに育てるための収益モデル を固めます。どんなに顧客に支持されるアイデアでも、収益を生まなければ事業として成立しません。価格設定、課金方法(単品売り切りなのかサブスクリプションなのか)、コスト構造などを具体化しましょう。市場テストの結果を踏まえ、ユーザーが納得する価格帯や支払いモデルを探ります。また、収益源は一つに限らず複数考えることも重要です(例:基本サービスは無料提供し、プレミアム機能で収益を得るフリーミアムモデルなど)。収益化の仕組みを検討する際には、競合他社のビジネスモデルも参考になりますが、自社ならではの強みを活かした差別化ポイント を組み込むことが望ましいでしょう。さらに、小規模展開での収支シミュレーションを行い、損益分岐点を把握しておくと安心です。こうした収益モデルの検証は概念実証(PoC)の段階で限定的にサービスをリリースし、実ユーザーから売上の手応え を測る形で行うこともできます。収益化の仕組みまで構築できれば、単なるアイデアが持続可能な事業 へと昇華します。
国内の成功事例
既存市場で差別化に成功した事例:ワークマンの新戦略
既存の成熟市場において独自の工夫で成功した例として、作業服大手「ワークマン 」の戦略転換が挙げられます。ワークマンは従来、建設現場などで働く職人向けの作業着専門店という位置付けでした。しかし、同社は自社の強みである「高機能 × 低価格」の路線を活かしつつ、新たな市場セグメントに挑戦します。それがプライベートブランド「ワークマン+(プラス)」による一般消費者向け展開です。ワークマン+では、プロ仕様の防水・防寒など高い機能性を備えたウェアを、アウトドアやスポーツ用途向けに提供しました
結果、価格重視のファストファッションと品質重視のアウトドア専門店の中間を突くポジションを確立。従来の職人層だけでなく、キャンプ愛好家や女性客など幅広い顧客層を獲得しています。この成功要因は、既存市場(衣料品小売)の中で差別化ポイントを再定義 したことにあります。競合他社が真似できない価格帯で専門店レベルの機能を提供し、「高機能なのに安い」というユニークな価値を打ち出しました。その結果、既存市場に埋もれがちな作業服ブランドが一般市場で強いブランドへと飛躍したのです。
新市場を開拓した事例:メルカリのフリマアプリ
新たな市場を創造して成功した国内事例として、フリマアプリ「メルカリ 」の躍進がよく知られています。メルカリは2013年のサービス開始当初、個人間取引(CtoC)のオンライン市場という、当時日本で十分開拓されていなかった領域に着目しました。それまでリサイクルショップやオークションサイトが担っていた中古品取引を、スマートフォンひとつで手軽かつ安心にできるプラットフォームとして事業化したのです。創業者の山田氏は「個人同士が売買できる未開拓の市場」にリスクを取りつつ挑戦し、結果として巨大な新市場を切り開きました。
メルカリ成功のポイントは、単に既存の延長で便利にしただけでなく、新たな顧客体験(UX)を創造したことです。出品のしやすさ、決済や配送の安全策、匿名でのやりとりといった仕組みにより、今までネット取引を躊躇していた層も巻き込むことに成功しました。つまり、日本では未成熟だったCtoC取引を 誰もが利用できる日常のサービス に昇華させ、新市場を創出したのです。その結果、メルカリは競争相手の少ないブルーオーシャンを先行者利益とともに独占し、国内外で1億ダウンロードを超えるサービスへ成長しました。メルカリの例は、斬新なテクノロジーだけでなく市場選定の妙 によって成功したケースと言えるでしょう。「競合と戦わず市場を創る」という発想がいかに強力かを示す好例です。
実践のポイント
企画の壁を乗り越えるための工夫
新規企画を形にする過程では、しばしば社内外の様々な「壁」に直面します。アイデアはあるのに前に進まない――そんなときに有効なのが小さく始めて検証する アプローチです。大きな予算や完璧なプランが整うまで待つのではなく、まず実験的に試してみる ことで停滞を打破できます。たとえば簡易プロトタイプを社内提案してみたり、限られた顧客に試用してもらったりするのも一法です。小さな成功体験を積み重ねることで、周囲の理解と協力も得やすくなります。
また、企画推進にはチームビルディングと意思決定の工夫 も欠かせません。新しい企画ほど社内調整に時間がかかったり反対意見が出たりしがちです。そこで、関係者を必要最小限のメンバーに絞り、現場のチームにある程度の権限を委譲することが有効です。意思決定者が多すぎると結論が出ず動きが鈍るため、プロジェクトオーナーを明確にしつつ、現場裁量で俊敏に進められる体制を整えます。
さらに、社外の視点を取り入れる ことも企画の壁を越える助けになります。自社だけで議論して行き詰まったら、顧客や他社の意見をヒアリングしてみましょう。思い込みを排し多角的に検討することで、新たな打開策が見えてくるかもしれません。いずれにせよ、「完璧を目指すよりまず一歩動かす」姿勢が、企画停滞の壁を乗り越える原動力となるでしょう。
失敗しやすいパターンとその回避策
最後に、企画を事業化する際によく陥りがちな失敗パターンと、その回避策について触れておきます。以下のポイントに注意すれば、企画倒れのリスクを減らし成功に近づけるはずです。
顧客ニーズの見極め不足 : 作ったものの需要がなかった、という失敗は典型的です。市場調査やユーザーインタビューを軽視せず、入念な事前調査 を行いましょう。自社の立ち位置や競合状況を分析し、「誰にどんな価値を提供すれば選ばれるか」を明確にすることが肝心です。回避策として、企画段階からユーザーの声を取り入れ、ニーズに合致しない要素があれば早めに方向修正することが挙げられます。
リソース計画の甘さ : 人材・資金・時間といった経営資源の見積もり違いも失敗につながります。専門知識が不足したまま進めたり、資金繰りがショートしたりしないよう、必要なリソースを現実的に算出 しましょう。場合によっては外部の専門家を招いたり、段階投資でリスク分散したりといった工夫も有効です。特にスタートアップ段階ではリソースが限られるため、優先順位を明確にして投下 することが求められます。
タイミングの見誤り : 市場投入のタイミングが早過ぎたり遅過ぎたりすると、せっかくの企画も成功を逃します。新サービスの公開時期は、市場トレンドや技術成熟度、競合動向を見極めて判断しましょう。競合より先行しすぎると顧客の準備が追いつかず、逆に出遅れるとシェアを奪われます。適切なタイミングを計るには、市場の声に常にアンテナを張る ことです。業界ニュースやユーザーの反応を日頃からウォッチし、投入のゴーサインと撤退ライン(見切り時)を事前に決めておきます。
社内の過信と慢心 : 「当社の実績やブランド力があるから大丈夫」という思い込みも危険です。客観的なデータに基づき判断する姿勢を貫きましょう。社内でポジティブな意見ばかりの場合でも、市場の実態を冷静に捉えるためにデータやエビデンスを重視 します。あえて悲観的なシナリオも想定し、リスクヘッジ策を講じておくと安心です。慢心を避けるには、チーム内で「悪魔の代弁者(デビルズアドボケイト)」役を設け、敢えて企画の弱点を指摘し合う仕組みも有効でしょう。
以上のように失敗パターンをあらかじめ認識し対策を講じておけば、「売れる企画」への道筋が一層クリアになります。もちろん実際の事業化では予想外の事態も起こりますが、準備と検証を重ねるプロセス自体が失敗リスクを減らす最善策です。最後にもう一度強調すれば、良い企画はアイデア発想と事業視点の二輪駆動 で生まれるものです。発想力にビジネスの現実性を掛け合わせ、ぜひ自社ならではの「売れる企画」を創り上げてください。
参考記事
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